マリー・アントワネット | 綿菓子屋映画雑記帳

マリー・アントワネット

 週刊文春の映画評は『豪華な少女コミック風』、『たわいなく絢爛たる世界』、『少女趣味の浮薄美』と誉めているのかけなしているのかよくわからない表現ばかりなのだが、良くも悪くもその通りだと思う。
 
 『ベルサイユのばら』をイメージして豪華絢爛な歴史絵巻を期待すると裏切られるだろう。マリー・アントワネットを描くが歴史は語られていない。マリー・アントワネットが見たり聞いたりやっただろう事がスクリーンに映し出されていく。監督のソフィア・コッポラは「最後の瞬間の直前まで、彼女の世界はシャボン玉だった」という。その世界は下界から切り離され歴史も政治もない。時間が止まっているかのようだ。
 
 そこはまさしくソフィア・コッポラの世界だった。演劇は物語を文字通り台詞で語られるが、コッポラは台詞を極力排し、映像で物語を構築していく。しかもソフトさを敢えて避けて、必要以上に硬い画像は大理石に描いたフラスコ画のようだった。
 
 ソフィア・コッポラの個性が光っていた。独自の世界を築いたのだから、ある意味では傑作といっても過言ではないと思うが、豪華絢爛な歴史絵巻を観たかったかなりの観客の期待を裏切っていることは事実で故に駄作とも言える。今後のソフィア・コッポラに注目したい。